1997年8月31日、花の都パリにて「ダイアナ」という月の女神と同じ名を持つ一輪の薔薇が散り果てました。世界を震撼させた突然の悲報によって元英国皇太子妃の存在は永遠に伝説化し、その名は世界史に深く刻まれることになります。常に世界を代表するファッションアイコンとしての自身を強く意識し、確固たるプレゼンテーション能力によって一世を風靡した奇跡の存在であったダイアナ元妃。

しかし、元妃の名を不朽としているのはその華麗なるファッション性のみではありません。皇太子妃としての約16年間、世界を舞台に繰り広げられた王室儀礼に基づく公式な責務の遂行を始めとする元妃ならではの幅広い外交は、英国の対外的イメージを飛躍的に向上させ、普遍的な英国文化の象徴として広く認識されるに至ります。また1996年の皇太子との離婚は新たに一個人としてのダイアナ元妃の世界に対する貢献に繋がり、その毅然とした活動指針は元妃ならではのファッション性と共に高く評価されていました。この公的活動とファッションによるプレゼンテーションを同次元で重要視するダイアナ元妃ならではの手法は、長年にわたる元妃の王族としての経験の蓄積故に可能とされたことであり、決して一夜にして成就されたものではありませんでした。経験と行動力、そして何よりも愛情を大切にするダイアナ元妃の活動スタイルは、その後元妃の遺児であるウィリアム王子とその妻キャサリン妃によって確実に受け継がれ、世界が注視する中、その伝説は更に純粋培養されているようです。

2021年、イギリスの海外領土として知られるアセンション島がリリースしたこのダイアナ元妃生誕60周年記念銀貨は、稀代のファッションリーダーとして名を馳せた元妃の類まれなる美意識と世界に対する生前の貢献に捧げられる待望の記念貨です。コイン表面には義母エリザベス女王の威厳を備えたオーストラリア版「第5肖像」、そして裏面には皇太子妃時代のものと思しき正装姿の元妃のポートレートが刻まれています。元妃が頭上に戴く華麗なるティアラは、かつて元妃が所有していた歴史的な宝飾品の中で最も貴重な「スペンサー・ティアラ」で、これは実家のスペンサー伯爵家伝来の天下の秘宝として知られているものです。コイン所有者に幸運をもたらすこと間違いなしの格調高き名貨の奇跡的な降臨を心から喜ばずにはいられません。